いまも彼には話していない -三島屋変調百物語事続ちっく、に-

時代小説が好きだ。今日は宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語事続」シリーズになぞらえたい。「三島屋」シリーズをざっくりいうと、百物語の聞き集め、でもそれは好奇心で集った人々が話す会ではなく、どうしても下ろしたい荷物を抱えた人が語る話を聞いて差し上げるという物語だ。

結婚が決まった当時のこと。私は彼(夫)と、今でもよく行く、大型書店にいた。書店はビルの3階分のフロアを有していて、いつも人で賑わっている。書店では気が済むまで別行動をする。それは、確か平積みになった文庫を手にした時だったと思う。なんの前触れもなく、全身が「ゾワッ」と総毛立った。同時にキーンと耳鳴りがした。周りの音は聞こえない。すると頭の中で文章を読んでいるのに気がついた。私は今、手にしている文庫を読んでいるのかもしれない、とも思った。

ーー「パパと一緒にいたかったの」と、小さな女の子の声がしたーー

それだけ、の文章。手にしていた文庫との関連は全く記憶にない。私は怖いというより、納得していた。「女の子だったんだね」と。

前の結婚を彼(夫)は語ったことはない。だけど1度だけ聞いたことがあった。授かったけど早い時期にダメになってしまった子がいたというのだ。長い結婚生活、さもありなん。なんの不思議もない。そして相手(前妻)はすでに再婚してお子さんがいる、と言った。私は、もしその子が生まれていれば今とだいぶ違っていただろうな、そう思った。

その話を聞いてから数年経って、結婚すると決まった頃に書店で見舞われた出来事だった。そのとき頭をよぎったのは「水子の霊がタタッている」とかいう、TVでよくやる「その霊が障害をもたらしている」というものだ。私は猛烈に腹がたった。どこにも行き場のない子が、うろうろして悪いことしてるから追い払えなんて、どの口で言えるのだ、と。だから、なんだ。行き場がないなら、私のところにいればいい。パパといられる。万が一、霊障があったとしてもかまわない。それが、子どもに恵まれなくてもだ。
「私と一緒にいよう。パパと一緒にいられる。もしママがいいなら別だけど、ずっと私の後ろにいていい。」と私は固まったまま、心の中で呟いた。耳鳴りがやんでから、私は手にしていた文庫を元に戻した。

そして今、私は子タヌキみたいな女の子二人の母ちゃんだ。途中、ダメだった子どもも2人いる。けっこう子沢山よ、とふざけさえする。再婚した前妻にもふたりのお嬢さんがいるそうだ。
ところで、私も彼も数人キョウダイがいるが、すべて男だ。たまたま、と思うけど。

最後に。聞いてくださって、ありがとう。

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